初めまして。連携教育をライフワークとする高橋榮明学長の後を継ぎました。
今後とも宜しくお願いします。
高橋榮明前学長は整形外科医としての経験から、医療・保健・福祉分野で専門職種間の連携が極めて重要なことを指摘され、専門職間連携教育(Inter-professional Education, IPE)を新潟医療福祉大学で率先して来られました。
その実績を基に、平成21年度の文部科学省戦略的大学連携支援事業「QOL向上を目指す専門職間連携教育用モジュール中心型カリキュラムの共同開発と実践」が採択され、5大学連携によるIPE活動が開始されました。私は新任の学長として、高橋前学長の足跡をそのまま辿ることを光栄に存じます。
私は公衆衛生学を専門として来ましたので、IPEの医療経済的意味についても理解しているつもりです。IPEが我が国でも患者さんやご家族の方々のQOL向上に寄与することは当然として、高騰する国民医療費の削減に役立ち、将来さらに頻繁になると予想される外国からの専門職参入によって生ずる“コミュニケーション・ギャップ”にも対応できると確信しています。IPEがイギリス、カナダ、アメリカ等で発展した理由もここにあると思われます。
本事業は、保健・医療・福祉分野における連携教育の標準化を5大学で協力して具体化するだけでなく、国内における大学間連携のあり方を探るパイロットスタディーとも言えます。この試みが成功した暁には、IPEは社会的認知を受け、さらなる発展が約束されていると確信しています。これからもご支援・ご鞭撻をいただければ幸いです。
本学は、平成11年4月に埼玉県越谷市に開学して以来、これまで、保健医療福祉の分野で高い水準のサービスを提供できる人材の育成や、保健医療福祉に関する教育・研究の中核として地域社会に貢献できる人材の育成に取り組んでまいりました。
今日、現代の保健医療福祉分野において、ケアの対象となる人々のより健康的な生活を実現するためには、関連する専門職の連携が不可欠となっています。本学では開学以来、「連携と統合」という教育理念を掲げ、全国に先駆けて学科を越えた教育実践の充実に取り組んできました。具体的には、多様なケアの担い手となる学生が学科の枠を越えて共通して学ぶ「連携と統合科目群」を設置し、4年次では全学科学生を対象に「インタープロフェッショナル演習(IP演習)」を実施しています。このIP演習は、学生が学科横断的に5~6名でチームをつくり、県内の保健医療福祉の実践現場で専門職連携を学ぶもので、正規科目となった本年度は埼玉県内の79施設・機関の御協力のもとで4年生全員が参加し実施いたしました。今後とも、地域と協働しながら、IP演習を展開していきたいと思っています。
この度の戦略的大学連携事業は、モジュール中心型のIPE用カリキュラムの策定を目指すもので、本学がこれまで進めてきた地域に出向き体験するIPEとは異なりますが、標準モジュールの共同開発などを通して、本学のIPEにも大いに役立ってくれるものと期待しています。
保健・医療・福祉領域の多職種連携教育の意義が提唱されていますが、日本でも連携教育の重要性が広く認識されるところとなりました。本学でも6年前に文部科学省の支援を受け、医学部・保健医療学部(看護学科、理学療法学科・作業療法学科)の学生が一緒に地域に滞在して行う合同カリキュラム(専門職間連携教育(IPE))が始まり、その効果を実感しているところです。
新潟医療福祉大学が代表校となった本取組は、IPEのカリキュラムに基づいてチーム演習を行い、将来はチーム医療の中で協力し合うことになる他学科の学生と共に課題を見出すと同時に解決策を探り、そして支援策を提案することができるようになることを目指した、医療教育の根本にあたる教育です。本取組は、福祉領域の学生も加わり患者さんや対象者の方々の生活の質(QOL)にも深く目を向け、様々なモジュールを用いていることが特徴です。この教育方法では、新潟・東京・札幌と全国の離れた学生同士が、実践に即した体験を共有することができると期待されます。
これまでも地域性を生かした様々な形の地域医療がありましたが、本取組では、異なる医療系大学の学生同士の交流の場も提供され、自大学での学習に広がりと深まりが出るものと考えています。保健、医療、福祉各分野における教育効果を多いに期待いたします。
本学が、この平成21年度 文部科学省 戦略的大学連携支援プログラムに参加できることはうれしいかぎりです。革新的な技術は、いち早く医療に取り入れられ、先進国において提供される医療技術は年々進化しています。それを提供する専門職の知識や技術もそれに伴って高度化してきました。しかしながら、技術の進化に伴って、患者さんやご家族が従来以上に安心して医療を受けることができるようになったかと言えば、必ずしもそうとは言い切れません。また、患者さんやご家族が医療に対して十分な満足が得られているかと言えば、必ずしもそうではありません。高度な技術は適切で効果的な提供によってこそ最大の効果を発揮すると思います。
今、先進国の医療で最も強く求められているのは、高度に進化した医療技術を適切かつ迅速に患者さんに提供する専門職の連携機能です。チーム医療の重要性が以前から指摘されてきましたが、高度に進化した専門職ほど真の意味での有機的連携にはハードルが存在するようです。この大学連携で作成されるプログラムが、異なる専門職のハードルを越えるために役立つことを祈っています。また、教育プログラムの検証というものは容易ではありませんが、参加大学が力を合わせ、信頼性・再現性をもった評価・検証にあたっていきたいと思います。
日本の社会福祉は、2000年以降地域での自立生活を支援する地域福祉がメインストリームとなっています。戦後の社会福祉行政は、基本的に福祉サービスを必要としている人が既存の社会福祉制度や福祉サービスに該当するかどうかを行政が障害程度や年齢等の属性毎に単身者単位に判断する方法でした。しかしながら、地域での自立生活支援をめざす地域福祉の時代にあっては、新たな視点と枠組に基づく分析と設計が必要になってきています。その要は、ICF(国際生活機能分類)の視点でケアマネジメントの方法を活用するソーシャルワーク機能です。
社会福祉学は、分析科学と設計科学とを統合する学問であり、そこでは自立生活を困難にしている要因を分析し、その上で福祉サービスを必要としている人や家族の“求め”と自立生活を支援する専門家が“必要”と判断した要因とを照らし合わせ、両者の“合意”に基づき生活支援方針を立て、ケアプランを練り、対人援助を展開するソーシャルワークという実践科学です。その際には、医療、看護、理学療法等の専門多職種による分析と支援方針をも踏まえ、それらを統合化するコーディネート機能が求められます。
したがって、ソーシャルワーク教育には、IPEが不可欠であり、その教材開発が待たれています。本プロジェクトに大いに期待します。



